こんな場面見たことないですか?
引用:デイリースポーツ
選手がDDTやパイルドライバーなど頭からマットに落ちる技を食らった時、手を「グーパー」したり、手を細かく振ったりする時があります。
頭から落ちるわけですから、直接のダメージ自体は頭や首にあるのに、なぜか腕や手先まで痛そうにしていますね。
この現象、ちゃんと医学的な理由があるんです。
今回はプロレス技の解説というよりは、技を受けた際のダメージについて解説します。
なんで腕が痺れるの?
結論から言うと、【腕神経叢の圧迫による上肢近位から末梢にかけての神経症状】が考えられます。
なんだか難しそうな日本語ですよね。
噛み砕いて解説していきます。
だから痺れる
先程説明した【腕神経叢】ですが、【わんしんけいそう】と読みます。
手(上肢)の運動は脳の命令を頚髄から出ている5本の神経根、すなわち、第5頚髄神経根から第1胸髄神経根を通って、各々の末梢神経に伝えます。この5本の神経が叢(くさむら)のように複雑に交叉しているため【腕神経叢】と呼びます。
この神経叢の損傷は上位損傷、下位損傷に分かれます。
簡単に言うと、上位は肩から腕、下位は前腕から手先に向かいます。
この腕神経叢を損傷する事例としては、よく起きるのはバイク事故でハンドルを持ったまま倒れることで腕神経叢が引き伸ばされる事例です。
また、【胸郭出口症候群】というのも腕神経叢の圧迫による疾患で、主に首や肩などの筋肉が硬くなり過ぎていると腕や手先に痺れや脱力感が出やすくなります。
引用:NHK
そんなに痺れて大丈夫?
特にプロレスラーにおいては、一般人よりも首が詰まる、腕が引き伸ばされる場面が多いです。
一般には事故など、相当な外力が加わらないと手先が痺れることは少ないと思います。
レスラーによっては慢性的に首や肩が痛い場合もあるし、長年のダメージで頸椎なんかも変形したり、椎間板もすり減り椎体同士が詰まってしまっていることも多いと考えられます。
背骨の中心にある脊髄から出る神経(腕神経叢など)が圧迫、損傷するだけならまだ肩、腕、手先の症状だけで済みます。
しかし、背骨の中にある脊髄自体が損傷した場合は上半身のみならず下半身も症状が出てしまいます。
いわゆる、脊髄損傷と呼ばれる状態ですね。
頭や首から強くマットに打って脊髄損傷になる事例はプロレス界で残念ながら起きています。
最悪の場合、脊髄の中でも首の上から2.3番目にある呼吸に必要な横隔膜を支配する神経が損傷すると、横隔膜が動かなくなるため呼吸が止まってしまいます。
脊髄の損傷度合いによっても回復の程度も様々です。
現在リハビリ中の高山善廣選手も試合中の脊髄損傷ですね。
以前は新日本プロレスの本間選手、今は引退された中西学選手も試合中の脊髄損傷により長期離脱しています。
腕や手の痺れや脱力感が神経の根本の方なのか、頚椎から出た先が原因なのかで重症度は変わってきますが、どちらにしても一般人が人生で経験することがほとんどない状態です。
それだけレスラーは体を駆使して戦っているんです。
最後に
自分は職業柄、選手の普段の姿勢や動きからどこに痛みがあるか、どこの関節に可動域制限があるか、など考えてしまいます。
やはりレスラーは首や腰へのダメージと、長年の負担による関節、神経のダメージは蓄積すると予想されます。
あまりに危ない技は脊髄損傷、脳震盪などを引き起こし、重度の障害、後遺症を残し最悪の場合死亡事故まで起こしかねません。
WWEではアンダーテイカー選手がフィニッシュで使うツームストンパイルドライバーが危険で、怪我人が出ることからしばらく使用禁止技になりました。
派手な技ほど危険が付き物です。
最近、個人的に禁止した方がいいと思う技は「牛殺し」と「フェニックスプレックス」です。
【牛殺し】↓
抱え上げて、
後頭部を膝の上に落とす
引用:東京スポーツ
【フェニックスプレックス】↓
前で抱えて頭を抑える
そしてスープレックスで頭から落とす
引用:njpw.co.jp
受け方をミスすると脊髄損傷になる可能性が極めて高いので見ていてドキドキします。。
日頃トレーニングを積んでいるレスラー同士だからできるのでしょうね。
本当に尊敬します。
以上で今回はこれで終わります!
最後まで読んで頂いてありがとうございました(^^)
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