ドラゴンスクリューってなんで痛いの?

プロレス技

はじめに

体の専門家プロレスを医学的に考えるリキヤプロレス研究所へようこそ。

今回はドラゴンスクリューについてです。


引用:日刊スポーツ

足を掴まれて、クルッと回転しただけでなんであんなに膝を痛がるのか考えたことありませんか?

ドラゴンスクリューは相手の片脚を持って内側に捻ることで膝へダメージを与える技です。

元々は藤波辰爾選手が使い始め、武藤敬司選手、棚橋選手を中心に継承され、現在では多くの選手がこの技を使っています。

脚を取られて捻りながら倒れる技で、技を受けた選手は膝を痛がる仕草をよく見せます。

そんなドラゴンスクリューについて解説していきたいと思います。

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ドラゴンスクリューってどんな技?


引用:DRADiTION

ドラゴンスクリューは藤波辰爾選手のオリジナル技で彼がジュニアヘビー級時代から使用していました。

藤波選手が、日本プロレス界の神様【カールゴッチ氏】から相手を倒す技(テイクダウン)として片脚をクラッチして引っ張るスキルを学んだ際に発明した技です。

カールゴッチ氏↓

引用:Amazon

藤波選手の愛称が【ドラゴン】なので、ドラゴンスクリューと名付けられました。

当初はキックを多用する選手に対するカウンターの技として使っており、あくまで【繋ぎ技】としての役割が大きかったそうです。

なので、この技を使うのは藤波選手だけであり、そこまで注目される技ではなかったそうです。

しかし、この技が一気に注目を浴びることになった立役者が、武藤敬司選手です。

1995年10月9日東京ドーム大会にて行われた、新日本プロレス対UWFインターの全面対抗戦のメインイベント、武藤敬司vs高田延彦戦です。


引用:日刊スポーツ

キックを得意とする高田選手がキックをした際に脚を捕らえドラゴンスクリューを放ったことで高田選手は膝を負傷。

足4の字固めで膝を痛めつけ試合に勝利。

この試合で武藤敬司選手の使うドラゴンスクリューが一気に注目される必殺技になったのです。

高田選手はドラゴンスクリューに対する受け身が上手くとれずに膝を負傷してしまったと言われています。

これもドラゴンスクリューが当時あまり知られていない技だったために受け身が素早くできなかったんだと思います。

前置きが長くなりましたが、ドラゴンスクリューの概要はこれぐらいにして、次にドラゴンスクリューはなんで効くのか、体の専門家の視点で考えてみたいと思います。

どこに効くの?

やられた選手が膝を抱えるから膝が痛いのは確かだと思いますが、膝の中のどこにダメージがあるのか。

【前十字靭帯・後十字靭帯と半月板の損傷】が考えられます。

なぜ上記の部分にダメージが加わるのか、詳しく考察していきます。

なんで効くの?


引用:日刊スポーツ

ドラゴンスクリューは写真を見てわかる通り、相手の足部や足首、下腿を持っています。

その状態で内側へ回転させるため、相手の下腿は強制的に内旋させられます。

ここで解剖学の勉強です。


千船病院HPより引用

膝の靭帯は大きく分けて、前十字靭帯後十字靭帯内側側副靭帯外側側副靭帯という4つの靭帯が存在し、膝関節が外れることなくスムーズに曲げ伸ばしできるよう役割を果たしています。

下腿とは簡単に言うと膝下(スネ)の骨のことを指します。

下腿が内旋するとどうなるのか。

言い方を変えると、下腿が内旋し過ぎるのを止める役割を果たしているのはどんな組織なのか?

多くは前十字靭帯が内旋方向への制御をしていると言われています。

前十字靭帯の他には後十字靭帯が下腿の内旋方向への制御をしています。

ACL=前十字靭帯 PCL=後十字靭帯 MCL=内側側副靭帯 LCL=外側側副靭帯

さらに、大腿骨と下腿(脛骨)の間には緩衝材や骨同士の適合性を良くするための役割のある【半月板】があります。

強い外力で脛骨が回旋させられると、間にある半月板はすり潰される形で損傷しやすくなります。

下腿が内旋させられることで、

【前十字靭帯・後十字靭帯が急激に引っ張られ、さらに半月板がすり潰される】

そのため、ドラゴンスクリューを食らうと膝が痛い、というメカニズムです。

一般的に前十字靭帯を損傷しやすい体勢とドラゴンスクリューを受けた時の体勢を見比べてみると、とても似ていることがわかると思います。


引用:日刊スポーツ

ドラゴンスクリューを受ける選手は自身も1回転しますよね?

あれは、下腿を急激に内旋されるため、そのまま踏ん張ってしまうとモロに回旋ストレスを受けてしまい靱帯のダメージが強くなります。

それを最小限に防ぐため、自身も回転しできるだけ下腿だけが強く回旋されないようにダメージを逃がす、いわゆる【受け身】をとっているのです。

そのため、ロープ越しのドラゴンスクリューでは体を回転させることができないため、回旋ストレスを逃せません。

なのでダメージがより大きいという訳です。

ちなみに

近年では、新日本プロレスの棚橋選手などが逆回転のドラゴンスクリューを使うことがあります。


引用:njpw.co.jp

逆回転にすると、急激に下腿は外旋させられます。

通常のドラゴンスクリューの逆回しですね。

通常のドラゴンスクリューでは、下腿が内旋するため、前十字靭帯・後十字靭帯が伸長されると伝えました。

再度解剖学の勉強ですが、脛骨が外旋しすぎるのを制御しているのは内側側副靭帯、外側側副靭帯です。

上記に示した文献によると、

ACL-PCLは前十字靭帯と後十字靭帯のことで、内旋で緊張となっているのに対し、
MCL-LCLは内側側副靭帯と外側側副靭帯のことで、外旋で緊張となっています。

要は、強制的に外旋させられた際に引き延ばされるのは内側・外側側副靭帯であるということです。

外回しのドラゴンスクリューで下腿が外旋すると、内側側副靱帯、外側側副靱帯が強く伸長されます。

解剖学的な各靱帯の位置関係から、内旋した時と外旋した時では引き伸ばされる靱帯が変わるということです。

よく解説、実況席で解説してくれる獣神サンダーライガーさんやミラノコレクションA.T.さんが

「内回りは内側側副靱帯、外回りは外側側副靱帯にダメージがあります!」

と言っていたりしますが、医学的にはちょっと違うんじゃないかな?と思ったりします。(批判はしていません。お2人とも大好きです)

とにかく、やられたら膝が痛いことに変わりはないから細かいことはいいんです。笑

最後に

今回はドラゴンスクリューについて理学療法士の視点で深掘りしてみました。

足を掴まれて、クルッと回転しただけでなんであんなに膝を痛がるのか考えたことありませんか?

医学的に考えると、先程説明したようなメカニズムで膝へダメージが与えられると考えます。

いつもお伝えしているように、プロレスラーはダメージを極力受け過ぎないように受け身をとったり、分厚い体を作ったり、ダメージを逃すスキルを身につけています。

友達と遊び半分でドラゴンスクリューを乱用しないで下さいね!

今回は以上で終わりたいと思います!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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